Jリーグ完全移籍・複数年契約の税務ガイド|ブラジル人選手の確定申告と節税のポイント

Jリーグでプレーするために来日するブラジル人選手にとって、日本の税制は非常に複雑です。特に複数年契約で「完全移籍」をする場合、1年未満の短期滞在とは税金の仕組みが大きく変わります。
今回は、3年契約などを結び「1年以上日本に滞在するケース」について、税理士の視点から解説します。


【Question】3年契約での来日。日本での納税はどうなりますか?

「私は、ブラジル出身のプロサッカー選手で、昨年は6ヶ月のレンタル移籍で鹿島アントラーズにいましたが、一度ブラジルに戻りました。今年1月下旬、ガンバ大阪から3年契約のオファーを受けて再来日しました。今回は自分自身で個別に納税手続きをする必要がありますか?」


【Answer】1年以上の滞在が予定されているため、ご自身での「確定申告」が必須となります。

複数年契約により日本国内に1年以上滞在することが明らかなので、「居住者」に該当し、前回の短期滞在とは異なり、毎月の源泉徴収だけでなく、年度末に自分自身で1年間の所得を計算して報告する「確定申告」の義務が発生します。


【解説】


1. 「居住者(非永住者)」としての課税ルール

日本国籍がなく過去10年以内の国内居住が5年以下の方は「非永住者」という区分になり、以下の所得が課税対象となります。
国内報酬: ガンバ大阪からの報酬(20.42%が源泉徴収されます)。
国外所得: ブラジルで保有している不動産から得られる不動産所得を国内の銀行へ送金したり、また国外口座から引き落とされるクレジットカードで国内で買い物したときは、日本で課税対象になりますが、全くそうしなければ日本で課税されません。

2. 住民税は「2年目の6月」から発生

来日1年目: 1月1日に日本にいなかったため、住民税はかかりません。
来日2年目: 翌年1月1日は日本に住所があるため、2年目の6月から多額の住民税(約10%)の支払い義務がスタートします。前年の年俸が高いほど負担が増えるため、事前の資金計画が不可欠です。

3. 契約に含まれる「経済的利益(家賃・教育費)」

クラブが負担する以下の費用は、実質的な報酬(経済的利益)とみなされ、所得税の対象になる場合があります。
・クラブ負担の住宅家賃
・家族の養育費や子供のインターナショナルスクール等の教育費

4. 確定申告による「追加納付」と「還付」

毎月引かれている20.42%はあくまで概算です。
追加納付: 年俸が高額な場合、確定申告でさらに税金を納める必要があります。
還付(払い戻し): 専属トレーナー、サプリメント、代理人手数料などの「必要経費」を正しく計上すれば、税金が戻ってくる可能性があります。

5. ブラジルとの二重課税を防ぐ「租税条約」

ブラジルは全世界の所得に課税する仕組みですが、日本とブラジルの間には「租税条約」が存在します。
租税条約 第13条: この条項により、日本で課税された報酬についてはブラジルでの課税が免除(または調整)され、二重課税を回避することができます。(参考 日本ブラジル租税条約:https://worldjpn.net/documents/texts/JPAM/19670124.T1J.html


【まとめ】

複数年契約は日本での生活の基盤ができる素晴らしいステップですが、税務面では「管理すべき数字」が増えます。特に2年目からの住民税や、ブラジルからの送金については、事前の計画が重要です。

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