日本への長期滞在・移住の税務ガイド|アメリカ人ITエンジニアのケース

日本の魅力に惹かれて来日し、長期滞在や移住を希望する外国人の方からよく問い合わせを受ける質問の1つに日本での税金制度があります。母国での課税・納税と日本で長期滞在する場合の課税関係は非常に複雑ですので、実際に想定されるケースを解説します。


【Question】私は米国人で、日本へ移住するつもりです。毎年、米国で確定申告し納税していますが、日本での課税の範囲や節税対策について教えてください。

私は米国人で、この度サンフランシスコのノースエンドにあるイタリア料理店で知り合った日本人男性と結婚し、配偶者ビザを取得次第、日本へ移住するつもりです。

現在、サンノゼ市マウンテンビューのGoogle本社にてITエンジニアとして勤務していますが、上司からは日本法人のGoogle合同会社(東京都渋谷区)へ出向するか、退職してGoogle合同会社から業務を請け負う個人事業主としての働き方も提案されました。

また、週末は副業として心理学博士号を取得してからマイナーリーグのあるベースボールチーム所属選手のメンタルケアを管理する個人事業を請け負っています。尚、日本へ移住後も継続する予定です。

他の所得では、米国の証券会社を通じてナイキとノーボ・ノルディスクの株を保有し、毎年源泉徴収後50万円程配当収入があります。


【Answer】来日後1年以上の滞在が予定されているため、あなたは「非永住者」の税務区分となり、日本国内で受け取る給与 (報酬)、更に、国外顧客からの報酬も日本での課税対象となります。

米国の配当収入を日本へ送金すれば日本での課税対象となりますが、米国の銀行口座に留めている限り日本での課税されません。


【解説】


1. 「居住者(非永住者)」としての課税ルール

日本国籍がなく過去10年以内の国内居住が5年以下の方は「非永住者」という区分になり、以下の所得が課税対象となります。

(所得税法 161①十二イ)“俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの”

1.1 Google合同会社からの給与または報酬:
Google合同会社からの給与、また業務委託としての報酬どちらもあなたが日本に身を置いて役務を提供することから、国内源泉所得とみなされ日本で課税されます。

給与として受け取る場合、Google合同会社は源泉徴収を行ってからあなたの口座に振り込みます。もしあなたの日本での収入が給与所得のみであれば、Google合同会社が適正に源泉徴収して納税するので、あなたが日本で確定申告する必要はありません。

一方で、業務委託契約により個人事業主であるあなたに支払う場合は100万円までであれば10.21%の源泉徴収(100万円超過額は20.42%)を行ってから、あなたの口座に振り込みます。

1.2 リモートカウンセリングの報酬:
国外の米国にいる顧客向けの役務提供であっても、あなたが日本に身を置いて役務提供を行っていることから、国内源泉所得とみさなれ日本で課税されます。顧客からの報酬が、あなたの米国にある銀行口座に送金されていても日本で所得を申告する義務があり、日本での課税対象となります。

1.3 米国での配当収入:
米国の証券会社を通じて得ている配当収入は国外源泉所得として日本での申告義務はありません。

ただし、日本の銀行口座へ送金した場合、国外口座のカードを使って日本で買い物をしたりした場合は、その分も日本で課税対象になります。

2. 日本での節税対策

あなたの仕事は、パソコン1つあればどこでも仕事ができる職種でありますので、もし一旦米国等の国外に行って仕事をしてその時に国外の銀行口座で報酬を得れば、日本での申告義務は無く課税されません。ただし、日本の口座へ送金したときは、課税されます。

3. 米国と日本の「二重課税」対策

あなたは米国人であることから、世界中どこで住んでいても、全世界で得た所得を翌年の毎年4月15日に米国で確定申告し納税する義務があります。

その所得には日本で3月15日までに申告そして課税された所得も含まれます。このような二重課税を排除するために、日本と米国は日米租税条約を締結しており、日本で納税した税金を米国の確定申告にて外国税額控除として減税することができます。

ただし、日本での2025年度の確定申告及び納税を翌2026年3月15日に実施した場合、2026年度に納税したことになります。また、米国でも2025年度の確定申告を翌2026年4月15日までに行いますが、日本での納税は2026年度に実施したので、翌2027年4月15日までに米国で行う確定申告で外国税額控除として申告できます。
つまり1年ほど、減税できる時期が遅くなってしまいます。

4. おすすめ

Google合同会社に出向するか業務委託契約による個人事業として請け負うかについて、給与収入であれば年間195万円まで所得控除できますが、個人事業の経費は事務所や自宅の一部家賃や光熱費程度ですので、給与収入の方がよいかもしれません。

また、リモートカウンセリングの個人事業の所得もありますので、この事業で経費を主に計上することになれば、Google合同会社からの個人事業収入に係る経費はほぼ無しになってしまいますので、Google合同会社に出向して給与を受け取る形態の方がよさそうです。

米国口座で受け取る配当収入は、日本へ送金せずに本当に必要なときにのみ送金することで、日本での課税を最小限にできます。

米国では10%源泉徴収されますが、その後日本に送金にすれば20.315%更に課税されます。
日米租税条約にて、日本の確定申告にて米国で課税された10%分の税金を控除できますが、日本の方が税率が高いので、20.315%と10%の差である10.315%を余分で日本で納税する必要があります。


【まとめ】

過去10年間のうち日本国内の居住期間が合計5年以下である米国人が日本へ移住する場合、税務上の区分は「非永住者」と定義されます。
この区分では、雇い主やクライアントがどこに所在しているかに関わらず、「あなたが物理的にどこで仕事をしているか」によって、日本での納税義務の有無が決定されます。

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